G25主軸速度変動検出OFFコマンド:CNCプログラミング解説
Fanuc、Siemens、MitsubishiのCNC制御装置におけるG25、G163などの主軸速度変動検出OFFコマンドの使い方を詳しく解説。衝突や工具破損を防ぐパラメータ、ブランドごとの違いを網羅。
はじめに
重荒加工やねじ切り加工中に主軸速度変動検出を無効にすると、ワークのチャック爪からの飛び出し、工具破損、さらには刃物台がチャック爪やバイスジョーに激突する致命的な機械衝突を引き起こします。オペレータが主軸速度の監視をOFFにしたまま量産加工を開始してしまうと、被削材の硬度ばらつきや工具摩耗に起因する負荷急増に対して安全装置が作動しません。このパラメータが未検証のまま量産に入ると、2ロット目から寸法ばらつきが広がり、最終検査で初めて不良が発見されるという深刻な不良品発生リスクを招きます。量産プロセスにおける再現性の低下を防ぎ、機械の安全性を担保するためには、制御装置ごとの指令動作とパラメータ特性を完全に理解しておく必要があります。
技術概要
| 機能 | 技術的詳細 |
|---|---|
| 指令コード | Fanuc: G25 / Siemens: G25 / Mitsubishi: G163 |
| モーダルグループ | Fanuc: グループ08(旋盤)、グループ19(マシニングセンタ)(モーダル) / Siemens: グループ03(モーダル) / Mitsubishi: グループ00(モーダルキャンセル) |
| 対象ブランド | Fanuc, Siemens, Mitsubishi |
| 重要パラメータ | Fanuc No. 3402 Bit 6 (CLR) / Siemens SD 43410 ($SA_WORKAREA_MINUS_ENABLE) / Mitsubishi #43071 (sp_spd_flc_dtc_p) |
| 主な制約事項 | SiemensとMitsubishiは独立したブロックでの指令が必要。SiemensのG25は主軸速度変動検出OFFではなく、下限作業領域制限または下限主軸速度制限として機能。 |
クイックリード
- 主軸速度変動検出を無効にすると、切削抵抗によって実際の速度が低下した際に、コントローラがフィードホールド(送り一時停止)をかける安全機能が解除されます。
- Fanucシステムでは、パラメータ No. 3402 Bit 6 が有効な場合、電源投入時またはリセット時にモーダルでデフォルトでG25(監視OFF)状態になります。
- Siemens制御では、G25は速度変動監視をオフにするのではなく、下限作業領域制限または下限主軸速度制限を設定します。
- Mitsubishiシステムでは、G163が主軸速度変動検出をOFFにする指令であり、G162が遅延時間や許容範囲のパラメータを指定してONにする指令です。
- Mitsubishi制御では、同期タップ、主軸オリエンテーション、またはC軸モードの実行中に、主軸速度変動検出が自動的にバイパスされます。
- ブランド間でのG25やG26のプログラムの流用は重大なエラーを引き起こします。MitsubishiでG26を実行するとタップ戻り動作がトリガーされ、SiemensでG25を実行すると予期しないトラベルリミットが設定されます。
基本概念
主軸速度変動検出は、CNCシステム内の電子的な監視役として機能します。この機能が有効な場合、コントローラは主軸エンコーダからの実際のフィードバック速度を監視し、プログラムされた設定速度と比較します。被削材の硬度変化や重切削負荷によって主軸速度が事前に定義されたしきい値を超えて逸脱した場合、システムは機械を保護するためにアラームを出力します。
G25またはG163指令をプログラミングしてこの監視機能をOFFにすると、コントローラによるフィードバック速度の検証方法が変化します。監視が無効になると、コントローラは実際の主軸速度がプログラムの目標値と一致しているか確認しなくなります。この状態で刃物台(タレット)の刃先が被削材の硬い部分、スケール(黒皮)、または主軸のストール(停止)に遭遇すると、主軸速度は急激に低下しますが、各軸はプログラムされた送り速度で移動を続けるため、刃物台が工具をストールしたワークに押し込んでしまいます。
このコマンドの構成は、CNCメーカーによって大きく異なります。FanucはG26で開始された監視をオフにするためにG25を使用し、MitsubishiはG162をキャンセルするためにG163を使用します。一方、Siemens SINUMERIKは、主軸の速度変動を監視するのではなく、物理的な座標境界や主軸速度の上限・下限を定義するためにG25およびG26を完全に異なる目的で使用します。
コマンド構造
主軸速度変動検出をOFFにするための構文ルールは、制御装置のアーキテクチャによって異なります。Fanucシステムでは、G25はアドレスパラメータを持たない独立したモーダルコマンドであり、以前に有効化されたG26監視モードをグローバルにキャンセルします。
Siemens制御では、G25は独立したブロックで記述する必要があり、作業領域の境界を設定するための軸座標、または最小速度制限を設定するための主軸アドレスが必要です。Mitsubishiシステムでは、G163をオプションの主軸アドレスとともに指定して特定の主軸의検出をキャンセルするか、パラメータなしで指定してすべての主軸の監視を同時に無効にします。
コマンド構文
- Fanuc:
G25 ; - Siemens(作業領域制限):
G25 X... Y... Z... ; - Siemens(主軸速度制限):
G25 S... S1=... S2=... ; - Mitsubishi:
G163 S... ;
パラメータとアドレス
| アドレス / パラメータ | システム / ブランド | 概要 |
|---|---|---|
| X, Y, Z | Siemens | 基本座標系(BCS)における作業領域を定義する下限座標リミット。 |
| S | Siemens | マスタースピンドルに対する最小主軸速度制限(rpm)。 |
| S1, S2 | Siemens | 追加スピンドルに対する最小主軸速度制限(rpm)。 |
| S | Mitsubishi | 無効化対象の主軸名または主軸番号(通常は1〜9)。 |
| P | Mitsubishi | 検出開始遅延時間(秒単位、G162でプログラム)。 |
| Q | Mitsubishi | 主軸到達速度検出幅のパーセンテージ(G162でプログラム)。 |
| R | Mitsubishi | 許容主軸速度変動率のパーセンテージ(G162でプログラム)。 |
| I | Mitsubishi | 許容主軸速度変動範囲(rpm、G162でプログラム)。 |
ブランド別応用
Fanuc
Fanucシステムでは、G25は主軸速度変動検出を無効化します。システムパラメータ No. 3402 Bit 6 は、電源投入時またはリセット時にデフォルトでG25状態にするかどうかを決定し、パラメータ No. 3401 はアクティブなGコードシステムを決定します。
G25コマンドはモーダルであり、旋盤構成ではグループ08、マシニングセンタ構成ではグループ19に属します。G26によってキャンセルされるまで有効です。
| カテゴリ | 項目 / 設定値 | 概要 |
|---|---|---|
| パラメータ | No. 3402 Bit 6 (CLR) | 1に設定すると、起動時またはリセット時にデフォルトのクリア状態Gコード(G25)を復元します。 |
| パラメータ | No. 3401 Bit 6 (GSB), Bit 7 (GSC) | GコードシステムA、B、またはCを選択します。GSC=0およびGSB=1の設定で、GコードシステムA(デフォルト)が選択されます。 |
| アラーム | アラーム PS0010 | 主軸速度変動検出オプションがインストールされていない状態でG25またはG26を指定すると、"IMPROPER G-CODE"(不適切なGコード)がトリガーされます。 |
| アラーム | アラーム PS0200 | 指令された主軸速度がギア段の制限速度を超えているか、G96(周速一定)モード中にタップ加工を実行すると、"ILLEGAL S CODE COMMAND"(不正なSコード指令)がトリガーされます。 |
| アラーム | アラーム PS0202 | シリアル主軸ユニットのパルスレートが4msまたは8msあたり32,768パルスを超えると、"POSITION LSI OVERFLOW"(位置LSIオーバーフロー)がトリガーされます。 |
| バージョン差異 | Series 30i/31i/32i-B Plus | G25は、旋盤システムではグループ08、マシニングセンタシステムではグループ19に分類されます。 |
| バージョン差異 | 複数主軸構成 | G26は特定主軸を対象にするアドレスPを受け入れますが、G25はグローバル指令として機能するか、すべての主軸の監視をOFFにします。 |
警告: G25が有効な状態で運転すると、コントローラは実際のフィードバック速度を検証しなくなります。切削抵抗が主軸モータの能力を超えた場合、刃物台(タレット)が工具を停止したワークやチャック爪に押し込む危険性があります。
Siemens
Siemens制御では、主軸速度変動監視にG25を使用しません。G25は下限作業領域制限または下限主軸速度制限を設定するグループ03のモーダルコマンドです。パラメータ SD 43430 は、各軸の負の座標リミットを定義します。
座標軸を伴うG25のプログラミングは、独立したブロックで行う必要があります。G25によって設定された仮想境界を有効にするには、WALIMON を実行しなければなりません。
| カテゴリ | 項目 / 設定値 | 概要 |
|---|---|---|
| パラメータ | SD 43430 $SA_WORKAREA_LIMIT_MINUS | 基本座標系(BCS)における下限作業領域リミットを定義する軸固有の設定データ。 |
| パラメータ | SD 43410 $SA_WORKAREA_MINUS_ENABLE | 下限作業領域リミットチェックを有効(1)または無効(0)にする軸固有の設定データ。 |
| パラメータ | MD 10604 $MN_WALIM_GEOAX_CHANGE_MODE | ジオメトリ軸の切り替え時において、作業領域リミットを保持する(1)かクリアする(0)かを決定します。 |
| パラメータ | MD 10710 $MN_PROG_SD_RESET_SAVE_TAB | リセットまたは電源投入後も、プログラムされたG25設定データリミットを保持するかどうかを決定します。 |
| パラメータ | MD 20150 $MC_GCODE_RESET_VALUES | NCKリセット時のGグループ初期値。インデックス[14]はグループ3(G25)に対応します。 |
| アラーム | アラーム 61816 | G27チェック時に軸位置が機械原点から逸脱していると、"Axes not on reference point"(軸が基準点にありません)が発生します。 |
| アラーム | アラーム 14800 | 固定送り速度が有効になっていない状態で、送り速度Fが0にプログラムされると、"Channel %1 Set %2 programmed path velocity <= 0"(プログラムされたパス速度が0以下です)が発生します。 |
| アラーム | アラーム 14060 | ブロックスキップレベルが /1 〜 /9 の有効範囲外に設定されると、"Impermissible skip level"(不適切なスキップレベル)が発生します。 |
| アラーム | アラーム 22280 | G33ねじ切り加工中に、軸の加速に必要な助走距離が不足していると、"Programmed run-in path too short"(プログラムされた助走距離が短すぎます)が発生します。 |
| アラーム | アラーム 16748 | G331タップ加工中の指令速度が、アクティブなギア段の制限値を超えました。 |
| バージョン差異 | SINUMERIK 802D sl | システムパラメータ MD 10604 および MD 10715 は書き込み保護されており、変更できません。 |
| バージョン差異 | 802D sl 対 840D sl | G27は802D slでは開発中の状態ですが、840D slでは完全にアクティブであり、cycle328.spfにマッピングされています。 |
警告: SiemensのG25制限は、パラメータで無効にしない限りシステムリセット後も保持されるため、オペレータが移動境界が無効になっていると誤解すると、段取り中に工具衝突を引き起こす危険性があります。
Mitsubishi
Mitsubishi制御では、主軸監視にG25は使用されず無視されます。主軸速度変動検出はG162で有効化され、G163でキャンセルされます。パラメータ #1242 および #43071 などがデフォルトの監視設定を制御します。
G163は独立したブロックでプログラミングする必要があります。アドレスSを指定すると特定の主軸を対象にし、Sを省略するとすべての主軸に対する監視が無効(モーダル)になります。
| カテゴリ | 項目 / 設定値 | 概要 |
|---|---|---|
| パラメータ | #1242 set14/bit2 | 主軸速度変動検出時に、操作エラー M01 1105 をHMI画面に出力するかどうかを設定します。 |
| パラメータ | #43071 sp_spd_flc_dtc_p | アドレスPが省略された場合の、デフォルトの監視開始遅延時間(秒、0〜99.999)。 |
| パラメータ | #3105 sut | Qが省略された場合の、デフォルトの主軸速度到達検出幅(1〜100%)。 |
| パラメータ | #43072 sp_spd_flc_dtc_r | Rが省略された場合の、デフォルトの許容主軸速度変動率(1〜100%)。 |
| パラメータ | #43073 sp_spd_flc_dtc_i | Iが省略された場合の、デフォルトの許容主軸速度変動範囲(0〜999,999 r/min)。 |
| アラーム | 操作エラー (M01 1105) | 主軸の実際の回転速度がRまたはIの制限を超えて変動した際に発生し、PLC信号を送信します。 |
| アラーム | プログラムエラー (P35) | プログラムされたS、P、Q、R、またはIが範囲外であるか、対象の主軸がマウントされていません。 |
| アラーム | プログラムエラー (P45) | G162またはG163と同じブロックに、移動指令や補助機能(Mコード等)がプログラムされています。 |
| バージョン差異 | M800V/M80Vシリーズ (vA9+) | 揺動切削(G08.5)および切削低減制御に対応しており、G162/G163の構文は従来モデルと同一です。 |
| バージョン差異 | MTB(機械メーカ)仕様 | 主軸番号方式(1〜9)に代わり、主軸名指定方式(パラメータ #3077 Sname)に対応しています。 |
警告: 高負荷切削中にG163を使用して速度監視を無効にすると安全チェックが行われなくなるため、主軸がストールした場合でも送り軸が動き続け、重大な工具破損を引き起こす危険性があります。
ブランド比較
下表は、Fanuc、Siemens、およびMitsubishiシステムにおけるコマンド機能、監視方法、アラーム動作、およびバイパスプロトコルの違いをまとめたものです。
| 比較項目 | Fanuc | Siemens | Mitsubishi |
|---|---|---|---|
| G25の機能 | 主軸速度変動検出OFF | 下限作業領域制限 / 下限主軸速度制限 | 使用不可(認識されません) |
| 主軸速度変動検出のアクティブコマンド | G26(ON)、G25(OFF) | — (no source) | G162(ON)、G163(OFF) |
| アラーム応答 | 自動安全停止 / PLC信号 | 制限逸脱アラーム(WALIMONにより動作停止) | 操作エラー(M01 1105)はサイクルを自動停止せず、PLCロジックに依存 |
| 自動バイパス | — (no source) | — (no source) | タップ加工、主軸オリエンテーション、またはC軸モード時に自動的に一時解除(バイパス) |
技術解析
G25の機能的定義は、各制御装置メーカー間における重大なアーキテクチャの違いを示しています。FanucがG25を主軸速度監視の無効化コードとして使用するのに対し、Siemensは物理的な軸移動の限界を設定するために使用します。物理的な軸移動の限界を設定するために使用します。これらのシステム間でプログラムを修正せずに移植すると、深刻な衝突事故を引き起こす原因になります。Fanucのプログラムに含まれるG25をSiemens機で実行すると、主軸監視をオフにするのではなく予期しない移動制限や速度制限をトリガーし、逆にSiemensのプログラムに含まれるG25をFanuc機で実行すると主軸速度監視が無効化され、重切削中に主軸がストールした際に刃物台(タレット)が衝突する危険に晒されます。
Mitsubishi制御では、速度変動検出にG162およびG163を採用することで、このコード競合を回避しています。Fanucで監視を有効にするG26は、Mitsubishiではタップ時の戻り退避動作(リトラクト)に割り当てられています。FanucのプログラムをそのままMitsubishi機にロードしてG26を実行すると、即座に退避動作が実行され、工具が素材(ワーク)を突き抜けて機械の衝突を引き起こす可能性があります。
主軸速度遅れに対する応答性も異なります。Fanucは安全停止をかけ、Siemensは座標境界を越える前に動作を即座に停止させます。一方、Mitsubishiは操作エラー(M01 1105)を表示するものの、軸送りを自動的には停止しません。機械メーカが設計したPLCロジックがサイクル停止を判断するまで動作が継続するため、安全シーケンスの挙動は機械のビルダー仕様に依存します。
プログラム例
Fanucのプログラム例
; Fanuc: G26 ; 主軸速度変動検出を有効にして旋削を監視
; Fanuc: G01 X100.0 Z-50.0 F0.2 ; 速度を監視しながら直線補間を実行
; Fanuc: G25 ; 主軸速度変動検出を無効にしてクリア状態に戻す空運転 (dry run): ワークピースを取り付けずに空運転 (dry run)での動作検証を行う際、コントローラはG26ブロックを実行し、速度変動監視のウォッチドッグを起動します。刃先はG01 X100.0 Z-50.0 F0.2で指定された軌跡に沿って移動します。切削負荷がかかっていないため、主軸速度は安定しており、速度遅れは検出されません。ブロックの終点に達するとG25コマンドが読み込まれ、監視モードが無効になり、ウォッチドッグの状態がクリアされます。機械は主軸の速度変動を監視することなく、次のプログラムブロックの実行を継続します。
Siemensのプログラム例
; Siemens: G25 X-80 Z30 ; X軸およびZ軸の下限作業領域制限を設定
; Siemens: G26 X80 Z330 ; X軸およびZ軸の上限作業領域制限を設定
; Siemens: G25 S300 S2=450 ; マスタースピンドルの下限速度を300 RPM、スピンドル2を450 RPMに設定
; Siemens: WALIMON ; G25およびG26で設定された作業領域制限を有効化空運転: 空運転での動作検証時、コントローラは最初の2つのブロックを実行し、座標値(X軸は-80、Z軸は30)と上限リミット(X軸は80、Z軸は330)をシステム設定データに直接書き込みます。3番目のブロックは、マスタースピンドル(300 RPM)とスピンドル2(450 RPM)の最小速度制限を設定します。WALIMONコマンドが実行されると仮想境界が有効になります。プログラマが手動ジョグや軸移動指令によって刃先をこの境界の外側に動かそうとすると、プログラムは即座に停止し、作業領域リミットアラームをトリガーします。
Mitsubishiのプログラム例
; Mitsubishi: G162 S1 P2.0 Q5 R10 ; スピンドル1の速度変動検出をON(検出遅延2秒、速度到達許容幅5%、許容変動率10%)
; Mitsubishi: S1200 M03 ; 主軸速度を1200 RPMに変更
; Mitsubishi: G163 S1 ; スピンドル1の主軸速度変動検出をOFF(モーダル)空運転: 空運転での検証時には、まずG162のブロックが実行され、スピンドル1の監視用パラメータ(検出開始遅延時間2.0秒、速度到達許容幅5%、許容変動率10%)が構成されます。速度指令値が1200 RPMに変更されると、コントローラは主軸の加速を許容するためにアクティブな監視を一時的に中断します。2秒の遅延時間が経過し、速度が目標の5%以内の範囲に安定すると監視が再開されます。最後に、G163 S1によってスピンドル1の変動検出が無効化され、フィードバック速度監視なしで主軸を回転させることができます。
エラー解析
下表は、Fanuc、Siemens、およびMitsubishiシステムにおける代表的なエラー、トリガー条件、および解決方法をアラームコードを含めて一覧にしたものです。
| 対象ブランド | アラームコード | トリガー条件 | オペレータ側の症状 | 根本原因 / 対策 |
|---|---|---|---|---|
| Fanuc | Alarm PS0010 | オプションが無効であるか、インストールされていない状態でG25またはG26をプログラムした。 | サイクルが停止し、画面に "IMPROPER G-CODE"(不適切なGコード)が表示される。 | パラメータオプションを有効にするか、プログラムからG25/G26コマンドを削除します。 |
| Fanuc | Alarm PS0200 | 指令された主軸速度が最大ギヤ段の制限を超えているか、G96(周速一定)モード中にタップ加工がプログラムされた。 | 主軸回転速度が指令値に達せず、画面に "ILLEGAL S CODE COMMAND"(不正なSコード指令)が表示される。 | Sコードの値を変更するか、タップ加工の前に周速一定制御(G96)をキャンセルします。 |
| Fanuc | Alarm PS0202 | シリアル主軸ユニットへの指令主軸パルスレートが、4msまたは8msあたり32,768パルスを超えた。 | 主軸が即座に停止し、"POSITION LSI OVERFLOW"(位置LSIオーバーフロー)アラームが表示される。 | 指令主軸速度を下げるか、主軸フィードバックのギヤ比パラメータを調整します。 |
| Siemens | Alarm 61816 | 軸位置が機械原点から逸脱している状態で、G27基準点確認を実行した。 | 軸移動が停止し、"Axes not on reference point"(軸が基準点にありません)アラームが表示される。 | すべての軸に対して原点復帰動作を実行します。 |
| Siemens | Alarm 14800 | アクティブな固定送り速度がない状態で、指令送り速度Fが0である。 | プログラムが停止し、画面に "programmed path velocity is less than or equal to zero"(プログラムされたパス速度が0以下です)と表示される。 | NCブロックに0以外の送り速度(例: F0.2)を記述します。 |
| Siemens | Alarm 14060 | ブロックスキップレベルが /1 〜 /9 の有効範囲外に設定された。 | サイクル実行が停止し、画面に "Impermissible skip level"(不適切なスキップレベル)と表示される。 | スキップ文字を /1 から /9 の有効な範囲内に修正します。 |
| Siemens | Alarm 22280 | G33ねじ切り加工時の安全な加速に必要な助走または逃げの距離が短すぎる。 | ねじ切りが開始される前に軸が停止し、"Programmed run-in path too short"(プログラムされた助走距離が短すぎます)アラームが表示される。 | 軸の加速距離を十分に確保するために、始点のオフセット距離を増やします。 |
| Siemens | Alarm 16748 | G331タップ加工中の指令速度が、アクティブなギア段の制限値を超えた。 | 主軸が加速せず、アラーム 16748 でサイクルが停止する。 | 適切なギア段を選択するか、より低い主軸回転速度を指定します。 |
| Mitsubishi | 操作エラー (M01 1105) | 重切削中に、実際の主軸速度が設定値から許容変動率(R)または許容変動範囲(I)を超えて低下した。 | 画面に "M01 1105" が表示されるかPLCのインジケータが作動するが、PLCが停止指令を出さない限りサイクル自体は停止しない。 | 送り速度の低下、切込み深さの縮小、工具摩耗の確認、または監視許容パラメータの再調整を行います。 |
| Mitsubishi | プログラムエラー (P35) | 指令されたS、P、Q、R、またはI引数の値が入力限界を超えているか、指定された名前の主軸が実装されていない。 | プログラムが開始されず、画面に "Program Error (P35)"(プログラムエラー)が表示される。 | パラメータ引数を許容範囲内に修正するか、正しい主軸名/主軸番号を指定します。 |
| Mitsubishi | プログラムエラー (P45) | G162またはG163と同じブロックに、移動指令や補助機能がプログラムされた。 | サイクルが停止し、画面に "Program Error (P45)"(プログラムエラー)が表示される。 | G162/G163は他と混ぜず、独立した専用ブロックに記述します。 |
実務応用ノウハウ
主軸速度変動監視を無効化する設定は、誤って使用するとワークの飛び出しやチャックへの激突を招くため、極めて厳格な運用管理が求められます。特に周速一定制御(G96)を使用する場合、刃先が中心線(X0)に近づくにつれて主軸は急加速します。このとき監視がキャンセルされていると、主軸の追従遅れやオーバーシュートが検知されず、チャックの機械的な保持力を超えた超高速回転に至り、ワークがチャック爪から飛散する大事故に繋がります。段取り前にNo.3402番パラメータを確認することで、このコマンドで最も多い非計画停止を防げるようになります。さらに、G22記憶形ストロークリミットチェックONやG23記憶形ストロークリミットチェックOFFが物理的な軸移動領域を管理するのと同様に、SiemensにおけるG25の座標制限もパラメータの永続性に留意する必要があります。軸移動を一定時間一時停止するG04一時停止(ドウェル)とは異なり、MitsubishiのG162で指定する検出遅延時間Pは監視開始のみを遅らせるパラメータであるため、過負荷による工具破損や再現性の低下を防ぐためには、機械メーカが実装したPLC安全ロジックとの連動状況を事前に検証することが不可欠です。
関連コマンド
- G26(主軸速度変動検出ON): 主軸回転速度の偏差を監視する電子的なウォッチドッグを起動します。
- G92 / G50(主軸最高回転速度クランプ): チャックが安全な遠心力の限界を超えないように、物理的な回転速度制限を設定します。
- G96(周速一定制御ON): ワーク上の工具の半径位置に基づいて、主軸の回転速度(rpm)を自動調整します。
- G97(周速一定制御キャンセル): 一定の主軸回転速度制御を復元し、自動回転数調整を解除します。
- WALIMON(作業領域制限有効化): Siemens制御において、G25およびG26によって設定された仮想境界の座標制限を有効にします。
おわりに
主軸速度変動検出を安全に制御するためには、単にGコードを入力するだけでなく、ハードウェアの特性と制御装置固有のパラメータ仕様に裏付けられたインターロック設計が必要です。多品種量産ラインにおいては、段取り替えのタイミングで主軸制限クランプ値(G92やLIMS)とパラメータ設定値の整合性を必ず確認してください。主軸監視の無効化(G25やG163)を適用する工程は必要最低限にとどめ、異常検出時には速やかにフィードホールドがかかる安全保護機能を維持することが、突発的な工具破損を防止し、高品質なロット生産を継続するための最善 of 手段です。
よくある質問
ロット生産で2ロット目以降に加工寸法がばらつく原因は何ですか?
これはワークの硬度変化や黒皮負荷のばらつきによって主軸速度が低下しているにもかかわらず、主軸速度変動検出がOFF(G25状態)になっているために発生します。実際の主軸周速が低下した状態で同じ送り速度が維持されると、刃物の逃げや削り残しが生じ、寸法変化に繋がります。実務的な対策として、荒加工工程の直前でG26をプログラムし、主軸回転数の変動監視を有効にして切削負荷の変動を検知できるようにしてください。
リセットボタンを押した後に主軸速度変動監視が予期せず解除されるのを防ぐパラメータはありますか?
Fanucシステムでは、パラメータ No. 3402 Bit 6 (CLR) がリセット後のモーダル初期状態を制御しています。このビットが1に設定されていると、リセット時に自動的にG25(監視OFF)状態がロードされます。不意の監視解除によるツールスタール衝突を防止するため、段取り時にMDIモードでパラメータ No. 3402 のビット設定を確認し、安全要件に応じて0(リセット後も直前の状態を保持)へ変更するか、プログラムの安全起動ブロックに明示的にG26(監視ON)を記述してください。
Mitsubishi制御で主軸速度が低下した際に Operation Error (M01 1105) アラームが出ても機械が停止しないのはなぜですか?
MitsubishiのG162監視機能は、速度逸脱を検知してPLCへエラー信号を出力しますが、機械の送り軸を強制停止する処理は機械メーカーが構築したPLCロジック側に依存しているためです。アラーム表示のみで送り運動が継続してしまう場合は、ラダー図内のM01 1105信号に対するインターロック処理(フィードホールド回路)を確認し、過負荷検出時に自動停止するようにPLCプログラムを修正する、または荒加工時には送り速度オーバーライドを自動で下げる回路を追加するなどの対応をとってください。
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- CNC CARE Co-Founder (May 2025 - Present)
- Mitsubishi Electric NC Sales & Service Section Manager (2008 - 2025)
- Reis CNC Service Engineer (2003 - 2008)
- Ören Kalıp CNC Mold Line Team Leader (1999 - 2002)
CNC工作機械業界のあらゆる分野で25年以上の経験を持ち、ブランドに依存しないコンサルティング、エンジニアリング、純正部品サービスを提供するCNC CAREの共同創業者として活動を続けています。
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