G69座標系回転・ミラーイメージ解除のNCプログラミング
Fanuc、Siemens、MitsubishiのCNC旋盤におけるG68対向タレットミラーおよび座標回転のG69キャンセル機能を解説。#1202や#1119パラメータの検証、P29・M01 1036アラーム防止、刃物台衝突回避と量産ロットの繰り返し精度向上を図る実務ノウハウ。
はじめに
G68ミラー座標がアクティブな状態でオペレーターがリセットを押したり、手動パルスハンドル(手動ジョグ)で位置調整を行ったりすると、座標レジスタが刃物台・工具オフセット距離だけずれた状態になる。このオフセットを検証せずに自動運転を再開すると、刃物台(タレット)や工具ホルダがずれた軌跡に沿って移動し、テーブルクランプ、ワーク治具のバイス爪、あるいは主軸チャックの回転爪(チャック爪)に直接激突する。この急激な位置決めエラーは壊滅的なハード衝突(物理干渉)を引き起こし、切削工具を破砕させ、M01 1036やP29といった高電流過負荷・動作アラームコードを発生させ、ワークを完全に全損(不良品発生・スクラップ化)させる。特に段取り前にパラメータを未検証のまま量産に入ると、2ロット目から寸法ばらつきが広がり、最終検査で初めて不良が発見される原因となる。
技術概要
| コマンド | グループ | ブランド | 重要パラメータ | 主な制約事項 |
|---|---|---|---|---|
| G69 / G14 | Group 15 / Group 18 | Fanuc, Siemens, Mitsubishi | #1119 Tmiron, #1202 mirofs | バランスカットは切削送りの開始後、動的な軌跡追従を行わない |
クイックリード
- G69は座標ミラーリングを解除し、レジスタを基準タレットに戻します。
- G14はバランスカットモードの同期を解除します。
- パラメータ #1202 mirofs は基準タレットと対向タレットの間の距離を定義します。
- MitsubishiではTコマンドを介して直接ミラーの有効化が可能です。
- ミラーイメージモードがアクティブな間は、プログラムコンパイラ(G188)の切り替えを行わないでください。
- アクティブなミラーリング中に手動で軸を移動させた場合、再スタート前に絶対座標の検証が必要です。
基本概念
ターニングセンタでモーダルなG68ミラーイメージ機能を実装することにより、プログラマーは対向タレットで対称部品を加工する際に柔軟な座標プログラミングが可能になります。X軸の座標符号を自動的に反転させ、プログラム座標系を対向タレット側にシフトさせることで、G68はオペレーターが座標を再計算することなく、基準タレット用に作成されたプログラムを使用して対向タレットで加工を行うことを可能にします。同様に、G15バランスカットは両方のタレットでの切削送りの開始を同期させます。
長尺・細物のワークを加工する際、素材の両側から同時に切削工具を当てることで、ワークのたわみを防ぎ、構造的なガタ(剛性不足)を抑制し、振動を排除して、サイクルタイムを大幅に短縮できます。自動運転サイクルを開始する前に、セットアップオペレーターは機械のバイス爪、テーブルクランプ、または主軸チャックの回転爪(チャック爪)にクランプするなど、ワーク保持装置内に素材を物理的に配置し固定しなければなりません。
コマンド構造
G69コマンドは、G68によって設定されたアクティブなミラーイメージモードを解除します。これにより、座標フレームワークが対向タレットから基準タレットへ戻ります。構文は独立した準備機能コードとして機能し、ブロック上での追加の軸定義を必要としません。
バランスカットモードは別の構造に従い、同期の有効化にはG15、解除にはG14を必要とします。同期動作番号はLアドレスを使用して指定されます。オペレーターは、工具選択マスクや座標シフトのために適切なパラメータが構成されていることを確認する必要があります。
G69 ;G14 ;
| パラメータ / アドレス | 説明 |
|---|---|
| #1119 Tmiron | Tコマンドミラーイメージ選択 (有効/無効) |
| #1202 mirofs | 刃物台間距離 (半径値) |
| #1273 ext09/bit4 | ミラー有効軸定義 |
| #1118 mirr_A | 対向タレット摩耗補正方向 |
| L (G15) | タイミング同期動作番号 (0-9999) |
ブランド別応用
Fanuc
Fanuc制御装置は、明示的なG68およびG69準備機能ブロックを使用して対向タレットのミラーを処理します。制御装置は標準の座標処理を復元するために、アクティブなG69コマンドに依存します。
G68 ;G69 ;
| パラメータ | アラーム | バージョン |
|---|---|---|
| — (ソースなし) | SV0414 (関連) | — (ソースなし) |
Fanucには直接のTコマンドミラーリング統合機能がないため、プログラマーは標準のGコードブロックを挿入する必要があります。
Siemens
Siemensはアクティブフレーム管理を使用して座標回転とミラーを処理します。フレームを解除する際、ネイティブフレームのロールバックはアクティブなモーダルを完全に解除します。
G68 ;G69 ;
| パラメータ | アラーム | バージョン |
|---|---|---|
| — (ソースなし) | — (ソースなし) | — (ソースなし) |
Siemensはネイティブフレームのロールバック中にアクティブなフレームおよびモーダルを完全に解除します。
Mitsubishi
Mitsubishiでは、準備機能Gコードではなく、工具選択(Tコマンド)を介して直接対向タレットのミラーイメージをON/OFFできます。#1119 Tmiron や #1203 TmirS1 などのパラメータによってガイドされます。
G68 ;G14 ;
| パラメータ | アラーム | バージョン |
|---|---|---|
| #1119 Tmiron, #1202 mirofs | P371, M01 1036, P29 | #1037 cmdtyp リスト 6 & 7 |
Mitsubishiは、G68/G69旋削モーダルと手動任意逆転運転(G127)機能を動的に統合し、工具補正を正確に追従します。
ブランド比較
| 項目 | Fanuc | Siemens | Mitsubishi |
|---|---|---|---|
| 対向タレットミラー | 明示的なG68/G69ブロックが必要 | 明示的なブロックが必要 | Tコマンドから直接ON/OFF可能 |
| 逆転運転追従 | — (ソースなし) | アクティブフレームを解除 | モーダルシフトを動的に追従 (G127) |
| フォーマット切替ロック | 未監視 | 未監視 | プログラムエラー (P29) でロック |
技術解析
旋削加工において、Mitsubishiのミラーイメージおよびバランスカットの処理は、3つの主要なプログラムおよび座標挙動においてFanucおよびSiemensの制御装置と明確に異なります。第一に、Mitsubishiでは準備機能Gコードではなく、工具選択Tコマンドを介して対向タレットのミラーイメージを直接ON/OFFできます。パラメータ #1119 Tmiron、#1203 TmirS1、および #1204 TmirS2 に導かれ、指定された工具番号を選択することでワーク座標系および摩耗補正が動的にシフトします。FanucおよびSiemensの制御装置にはこのTコマンドミラーリング統合機能がなく、加工プログラム内に明示的なG68/G69準備機能ブロックを記述する必要があります。
第二に、MitsubishiはG68/G69旋削モーダルと手動任意逆転運転(G127)機能を動的に統合しています。手動任意逆転運転がアクティブな場合、オペレーターは手動ハンドルを逆回転させて工具を退避させることができます。この逆方向トレース中、Mitsubishiの運動カーネルは専用のモーダル情報記憶ブロックを使用してアクティブなG68座標シフト、工具方向補正(#1118 mirr_A)、およびオフセットを追従・維持し、軸ドリフトを防ぎ座標の安全性を保持します。Siemensはネイティブフレームのロールバック中にアクティブなフレームおよびモーダルを完全に解除します。
第三に、Mitsubishiはアクティブなミラーリング下でのバイモーダルプログラムフォーマット切り替えに対してパラメータロックされた検証フラグを強制します。Tコードミラーイメージモードがアクティブな系統でG188コマンドが発行された場合、制御装置は即座にコンパイラ切り替えをブロックし、プログラムエラー(P29)を発生させます。これにより、コンパイラを切り替える前に座標テーブルがクリアされ初期化されていることが保証されます。これはFanucやSiemensの制御装置では監視されない保護レジスタロックです。
プログラム例
Fanucのプログラム例
O1001
G68 ; 対向タレットのミラーイメージをON
T0202 ; 工具呼び出し
G69 ; ミラーイメージをキャンセル
空運転 (dry run): ワーク(素材)なしでブロックを実行します。G68で座標シフトが有効化され、G69読み込み後に完全に解除されることを確認します。
Siemensのプログラム例
N10 G68 ; ミラーイメージを有効化
N20 T2 D1 M6 ; 工具とオフセットの呼び出し
N30 G69 ; ミラーイメージをキャンセル
空運転: 安全な機械状態でサイクルをステップ実行します。G69実行後に残留オフセットなしでアクティブフレームがスムーズに復帰することを確認します。
Mitsubishiのプログラム例
G68 ; 対向刃物台のミラーイメージをON
T0202 ; 対向タレットの選択
G69 ; ミラーイメージをキャンセル
G15 L10 ; バランスカットモードを有効化
G14 ; バランスカットモードをキャンセル
空運転: 描画グラフィックを使用してサイクルをシミュレーションします。T0202がパラメータ駆動シフトをトリガーし、G14がパス同期を正常に解除することを確認します。
エラー解析
| アラームコード | 発生条件 | オペレータ側の症状 | 根本原因 / 解決策 |
|---|---|---|---|
| Mitsubishi P371 | 外部ミラー適用中にG68を指令 | サイクル停止 | 外部ミラーを解除する |
| Mitsubishi M01 1036 | G68実行中に外部ミラーを適用 | 機械障害 | G68実行中に外部ミラーを適用しない |
| Mitsubishi P29 | ミラーモード中にG188を指令 | プログラムエラーでロック | ミラーモード外でフォーマットを切り替える |
実務応用ノウハウ
バランスカットや対向タレットのミラー切削においてプログラム停止や機械障害を引き起こす最大の原因は、制御装置が送り開始後も両軸のパスを動的に同期し続けているという誤った前提で作業を進めることにある。G15やG68による同期指令は切削送りの開始タイミングを合わせるゲート機能に過ぎず、動作開始後の軸移動速度やオーバーライド調整をリアルタイムに制御することはない。そのため、対向タレットの移動距離や送り速度に僅かな不整合が存在すると、刃物台(タレット)が予定と異なる軌跡を描き、テーブルクランプ、治具のバイス爪、または主軸チャックの回転爪(チャック爪)に直接激突する。この衝突はボールねじの物理的変形やM01 1036、P29などのアラームを発出させ、ワークを完全に破壊(不良品発生)させる。
こうした生産ラインでの致命的なトラブルを未然に防ぎ、加工の信頼性と繰り返し精度を確保するためには、段取り(準備作業)段階でのパラメータ検証が不可欠である。段取り前にMitsubishiの #1202 mirofs(刃物台間距離)や #1119 Tmiron(Tコマンドミラー選択)、#1118 mirr_A(対向タレット摩耗補正方向)、#1273 ext09/bit4(ミラー有効軸)の構成パラメータを確認することで、このコマンドで最も多い非計画停止を防げる。もしこれらのパラメータが未検証のまま量産に入ると、熱変位や工具交換が重なる2ロット目から寸法ばらつきが広がり、最終検査で初めて不良が発見されるという深刻な事態を招く。オペレーターは自動運転を開始する前に、シングルブロックでの空運転を行い、G69やG14によるキャンセル処理と座標復元を物理的に確認することで、ロット間における再現性の低下を排除し高精度な加工品質を維持しなければならない。
関連コマンド
おわりに
G68対向タレットミラーやバランスカット機能の運用において、干渉事故を防ぎロット間での高い繰り返し精度を維持するための鍵は、段取り段階におけるパラメータ検証と事前の空運転確認にある。手動ハンドル操作やリセットを行った後は、自動運転を再開する前に必ず座標レジスタの整合性を確認し、G69またはG14によるキャンセル指令が正常に機能しているかを検証しなければならない。パラメータ設定とキャンセル処理の標準化を徹底することが、刃物台の衝突リスクを排除し、不良品発生を防ぐ最も確実な実務アプローチである。
よくある質問
G68ミラーモード使用時にロット間での寸法ばらつきを防ぐには、どのパラメータを検証すべきですか?
対向タレットの基準距離を定義するパラメータ #1202 mirofs および摩耗補正方向を制御する #1118 mirr_A を検証する必要があります。2ロット目以降の繰り返し精度低下や寸法変動を防ぐため、量産開始前にツールプリセッターで対向工具の摩耗補正値とパラメータレジスタの整合性を直接測定・確認してください。
アクティブなミラーイメージ下でG188を指令した際、P29アラームが発生する原因は何ですか?
Tコードミラーイメージモードが有効な状態でG188プログラムフォーマット切り替えを実行すると、コンパイラ内部の座標テーブル破損を防ぐため制御装置が処理を停止しP29を発生させます。切り替えを行う前にプログラム内で必ずG69またはTコードでのミラー解除を実行してからG188を指令してください。
手動ハンドル(手動ジョグ)で軸を移動させた後、G68ミラー切削を安全に再開するにはどうすればよいですか?
手動操作により座標レジスタと実際の機械位置にずれが生じると、自動運転再開時に刃物台がずれた軌跡を辿りチャック爪やバイス爪へ衝突する危険があります。再開前に絶対座標画面で現在位置をクリア・確認し、シングルブロック運転でファーストブロックの動作挙動を目視確認する手順を徹底してください。
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- CNC CARE Co-Founder (May 2025 - Present)
- Mitsubishi Electric NC Sales & Service Section Manager (2008 - 2025)
- Reis CNC Service Engineer (2003 - 2008)
- Ören Kalıp CNC Mold Line Team Leader (1999 - 2002)
CNC工作機械業界のあらゆる分野で25年以上の経験を持ち、ブランドに依存しないコンサルティング、エンジニアリング、純正部品サービスを提供するCNC CAREの共同創業者として活動を続けています。
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