G34可変リードねじ切りの指令方法と各社パラメータ設定ガイド
G34可変リードねじ切りのプログラミングと衝突回避策を解説。FanucのNo. 3401やSiemensのSD 42000、Mitsubishiの#1037パラメータ設定、アラームPS0429や14800の解決法、およびロット繰り返し精度を向上させる実務ノウハウを網羅。
はじめに
ワーク座標系の微小な位置ずれやスレッド加工中における予期せぬ非常停止(フィードホールド)の失敗は、可変リードねじ切り(G34)において、高速で回転するスピンドルチャックや心押台(tailstock)、またはテーブル上のバイスジョーにツールタレットがダイレクトに激突する致命的な衝突事故を引き起こします。この電子ギア同期による強固な噛み合いの中では、手動フィードレートオーバーライドは100%にロックされ、フィードホールドボタンを押しても軸は即座に停止せず、次の非ねじ切りブロックの終点まで移動を続けてしまいます。このパラメータが未検証のまま量産に入ると、2ロット目から寸法ばらつきが広がり、最終検査で初めて不良が発見されるという極めて高い生産リスクを伴います。段取り前に適切なパラメータ(FanucのNo. 3401やNo. 3453、SiemensのSD 42000やSD 42010、Mitsubishiの#1037や#8156など)を確認・検証しておくことで、このコマンドで最も頻発する非計画停止を防ぐことができます。加工前に退避座標や中間点の安全距離が正しいかを検証し、ロット間における寸法再現性の低下や不良品発生(スクラップ)を確実に防止することは、長期的な動作信頼性と繰り返し精度を維持するために不可欠です。
技術概要
| 仕様項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 指令コード | G34 (およびSiemensのネイティブデグレッシブ用G35) |
| モーダルグループ | グループ01 / モーダル移動指令 |
| 対象ブランド | Fanuc, Siemens, Mitsubishi |
| 重要パラメータ | Fanuc: Parameter No. 3401, No. 3453 Bit 4, No. 5130; Siemens: SD 42000, SD 42010, MD 18800; Mitsubishi: #1037, #8156, #2619 |
| 主な制約事項 | ねじ切り中は手動フィードレートオーバーライドが100%にロックされ、フィードホールドは無効化されます。ピッチが負の値に減少するのを防ぐため、開始リード変化率Kを設定する必要があります。周速一定制御 (G96) および刃先R補正 (G40) は無効でなければなりません。 |
クイックリード
- 周速一定制御の無効化: 主軸回転数の変動による応答遅れ(ラグ)とねじピッチの破損を防ぐため、G34を呼び出す前に必ず主軸一定回転制御(G97)をプログラムしてください。
- ノーズR補正のキャンセル: 工具経路の計算エラーを防ぐため、G34ブロックを実行する前に刃先R補正がキャンセルされていること(G40)を確認してください。
- リード変化率の検証: 工具が最終Z座標に達する前にピッチがゼロまたは負の値にならないよう、デグレッシブねじ切りにおけるリード減少率Kを計算・検証してください。
- 開始角度フォーマットの設定: Fanuc制御では小数点入力が厳密に禁止されており、即座に構文アラームが発生するため、開始角度Qは整数(例:180度の場合はQ180000)で記述してください。
- 基準点復帰の設定: プログラムエラーP484によるサイクル停止を防ぐため、Mitsubishi制御ではG34を呼び出す前にすべての物理送り軸の基準点復帰を完了させてください。
- ランイン・ランアウト領域の管理: 短いねじでの軸加速過負荷アラームを回避するため、Siemens制御ではDITSとDITEをプログラムしてランインおよびランアウトの加減速ゾーンを動的に調整してください。
基本概念
可変リードねじ切りは、ワーク主軸の回転と送り軸のサーボモーターとの間に、機械的に強固なリアルタイム同期を確立します。主軸上の位置エンコーダが主軸の実際の回転速度をリアルタイムで読み取り、CNCカーネルに軸送り速度を動的に調整するよう指令します。この同期により、1回転あたりのリードの変化率が制御され、漸増ピッチのエクストルーダースクリュー、漸減フィードスクリュー、および特殊なウォームギアの加工に不可欠な動作を実現します。この厳密な同期のため、ねじピッチの正確性を維持するために、ねじ切りブロックの実行中は手動フィードレートオーバーライドが完全に無効化され、100%にロックされます。同様に、G34ブロックの実行中はフィードホールドボタンが無効になり、押された場合でも軸は即座に停止せず、次の非ねじ切りブロックの終点座標まで移動を継続します。
ねじ切り終了座標が、回転する主軸チャック、チャック爪、心押台、またはテーブル上のバイスジョーに近すぎる位置にプログラムされている場合、プログラムの誤記や座標系のズレがあると、オペレータは送りスライドを時間内に停止させることができません。この送り動作の即時停止不能特性により、ツールホルダーやタレットが回転するチャックやワーククランプに高速で激突する致命的な衝突事故を招き、ねじ切り超硬インサートを破砕し、主軸を曲げ、深刻な軸過負荷アラームコードを発生させ、被削材を修復不可能な廃品(スクラップ)にしてしまいます。プログラマーおよびセットアップオペレータは、G34を呼び出す前に必ず刃先R補正をキャンセルし(G40)、主軸一定回転制御(G97)を設定しなければなりません。テーパねじや端面可変ねじにおいてG96(周速一定)を有効のままにすると、工具が径方向に移動するにつれて主軸回転数が変動し、演算遅れ(ラグ)が発生してピッチ精度が破壊され、ワークがスクラップ化する原因になります。
コマンド構造
G34コマンドには、ねじ切り終了点の座標、開始時の基準リード(公称ピッチ)、および主軸1回転あたりのリード変化率を指定する必要があります。G34ブロックが実行されると、CNCは主軸の回転ごとに基準リードからリード変化率を加算または減算して動作を補間します。変化率が正(プラス)の場合はリードが増加し(漸増ねじ)、負(マイナス)の場合はリードが減少します(漸減ねじ)。
アクティブな制御システムに応じて、座標入力は絶対値または増分値で指令できます。コントローラはこれらのアドレスを解釈して物理的な工具軌跡を生成します。正確な主軸同期を確保するため、多条可変リードねじを切削する際に重要となる開始角度オフセットパラメータをブロックに含めることができます。なお、これらの指令はG32 等リードねじ切りなどの標準ねじ切り指令をベースに拡張されています。
各制御装置の構文構成:
- Fanuc (システムA):
G34 X(U)__ Z(W)__ F(E)__ K__ Q__ ; - Fanuc (システムB/C):
G90/G91 G34 X__ Y__ Z__ F(E)__ K__ Q__ ; - Siemens (ネイティブ漸増):
G34 X... Y... Z... I... J... K... F... SF=... ; - Siemens (ネイティブ漸減):
G35 X... Y... Z... I... J... K... F... SF=... ; - Siemens (ISOモード):
G291 ; G34 X(U)... Z(W)... F... K... Q... ; - Mitsubishi:
G34 X(U)__ Z(W)__ F(E)__ K__ Q__ ;
G34の実行を管理する主要なアドレスおよび設定パラメータの詳細は以下の通りです:
| アドレス / パラメータ | 対象ブランド | 機能説明 |
|---|---|---|
| X(U), Z(W) | Fanuc / Mitsubishi / Siemens (ISO) | ねじ切り終点座標。X/Zは絶対位置、U/Wは増分距離を表します。 |
| X, Y, Z | Siemens (ネイティブ) | ネイティブSiemens平面における終点座標。 |
| F(E) | Fanuc / Mitsubishi / Siemens (ISO) | ねねじ切り動作開始時の基準リード(開始ピッチ)。 |
| I, J, K | Siemens (ネイティブ) | X、Y、Z軸方向のねじリード。 |
| F | Siemens (ネイティブ) | mm/rev2 または inch/rev2 単位でのリード変化率。 |
| K | Fanuc / Mitsubishi / Siemens (ISO) | 主軸1回転あたりのリード変化量。正の値でピッチが増加し、負の値で減少します。 |
| Q | Fanuc / Mitsubishi / Siemens (ISO) | 多条ねじ用開始角度オフセット(シフト角)。Fanucでは0.001度単位の整数(小数点不可)で指令します。Mitsubishiでは0.001〜360.000度を指定可能です。 |
| SF= | Siemens (ネイティブ) | 多条ねじ切り開始角度オフセット。度単位の十進数(0.0000〜359.9999度)で入力可能です。 |
ブランド別応用
Fanuc
Fanuc旋盤制御において、可変リードねじ切りはパラメータ No. 3401によって選択された座標システム下で実行されます。また、送り速度指令用のアドレス解析方法を規定するパラメータ No. 3453の管理も重要となります。
標準的なFanucのG34ブロックは、G34 Z-70.0 F4.0 K0.5 Q180000 ; のように記述されます。この指令により、開始リード4.0 mmから1回転あたり0.5 mm of 割合でリードを漸増させ、180度の開始角度オフセットをもって、絶対座標Z-70.0に達するまでねじ切りを行います。
| 分類項目 | 識別子 / パラメータ | 機能詳細と説明 |
|---|---|---|
| パラメータ | Parameter No. 3401 Bits 7 (GSC), 6 (GSB) | アクティブなGコードシステム(A、B、またはC)を選択します。G34はいずれのシステムでも使用可能です。 |
| パラメータ | Parameter No. 3402 Bit 6 (CLR) | 電源投入時またはリセット時に、モーダルGコードをデフォルト状態(クリア状態)に戻すかどうかを設定します。 |
| パラメータ | Parameter No. 3453 Bit 4 (FRC) | 面取りまたはコーナーR部の送り速度指令にEまたは,Eを使用するかを設定します。「1」に設定されている場合、G34でのEの使用が無効化され、アラームPS0009を誘発します。 |
| パラメータ | Parameter No. 5130 | リード(L)に基づいて、0.1L〜12.7Lの範囲でねじ面取り量を設定します。 |
| アラーム | Alarm PS0429 | 工具退避(リトラクト)シーケンスにおいて、ねじ切りの主要動作軸が退避軸として設定されている場合に発生します。 |
| アラーム | Alarm PS0050 | G34ねじ切りブロック内に、面取り(C)またはコーナーR(R)が直接プログラミングされている場合にトリガーされます。 |
| アラーム | Alarm PS0009 | Parameter No. 3453 Bit 4 (FRC) が1のときに、ねじ切りブロック内でアドレスEまたは,Eがプログラムされた場合に発生します。 |
| バージョン差 | Parameter No. 0001 Bit 1 (FCV) | 「1」に設定するとレガシーなSeries 15のプログラムフォーマットが有効になり、固定サイクルの解釈などが変更されます。 |
注意: Fanuc制御において、開始角度Qに小数点を含めて指定する(例:Q180.0)ことは厳格に禁止されており、即座に構文アラームが発生します。常に6桁の整数で記述してください。
Siemens
Siemens SINUMERIK制御は、固有のマシンデータ設定に基づいて可変リードねじ切りを管理します。外部言語解釈(ISOダイアレクト解析)機能の有効化は、マシンデータ MD 18800 で行われます。
ネイティブのSiemensモードでは、漸増可変ねじ切りは次のようにプログラミングされます: G34 Z-100.0 K5.0 F0.25 SF=180.0 ; ここで、リード変化率はアドレス F 下に mm/rev2 単位で記述され、開始角度には SF= が使用されます。
| 分類項目 | 識別子 / パラメータ | 機能詳細と説明 |
|---|---|---|
| パラメータ | SD 42000 $SD_THREAD_START_ANGLE | ねじ切りブロックで SF= または Q が省略された場合におけるデフォルトの開始角度オフセット位置。設定範囲は 0.0000〜359.999度です。 |
| パラメータ | SD 42010 $SD_THREAD_RAMP_DISP | DITS および DITE で指定された加減速ランプ長用のランインおよびランアウト経路の値を保持します。 |
| パラメータ | MD 18800 $MN_MM_EXTERN_LANGUAGE | 「1」に設定して外部ISOダイアレクトインタープリタを有効化します(ISO形式のG34を実行するのに必要です)。 |
| パラメータ | MD 20154 $MC_EXTERN_GCODE_RESET_VALUES | 外部言語での実行時におけるGコードグループのデフォルトを定義するチャネル固有のマシンデータ。 |
| アラーム | Alarm 14800 | G34/G35の実行中に経路速度がゼロ(例:F0がアクティブ)かつ「固定フィードレート」機能が無効な場合に発生します。 |
| アラーム | Alarm 61800 | ISOダイアレクトモードでG34が呼び出されたが、マシンデータ設定 MD 18800 が有効化されていない場合にトリガーされます。 |
| アラーム | Alarm 61001 | 上位ねじ切りサイクルにおいて、リードまたはピッチ変化率パラメータに矛盾または不適切な設定値が含まれる場合に発生します。 |
| バージョン差 | SINUMERIK 840D sl vs. 802D sl | 840D sl はグループ20多角旋削(G51.2 / G50.2)および高度な「衝突防止」ソフトウェアオプションをサポートしますが、802D sl はサポートしていません。 |
注意: ねじ切りブロック内またはその前に、有効な送り速度が定義されていることを確認してください。G34/G35の実行時に経路速度がゼロであると、コントローラはアラーム14800を表示して停止します。
Mitsubishi
Mitsubishiシステムは、各種パラメータ設定に基づいて可変リードねじ切りの動作を管理します。アクティブなGコードリストの選択は、パラメータ #1037 で行われます。
MitsubishiのG34コマンドは、G34 Z-70.0 F4.0 K0.5 Q180.000 ; のように記述され、開始角度オフセットQには度単位の十進数(小数点入力)を使用できます。
| 分類項目 | 識別子 / パラメータ | 機能詳細と説明 |
|---|---|---|
| パラメータ | Parameter #1037 cmdtyp | Gコードリスト選択(アクティブなGコード体系の種類を設定)。 |
| パラメータ | Parameter #8156 Fine thread cut E | アドレス E の解釈方法を設定。「1」で高精度な十進数リード表記、「0」で1インチあたりのねじ山数指定になります。 |
| パラメータ | Parameter #1260 set32/bit4 | 主軸同期モード。0で主軸Z相のゼロ点を検出してから切削を開始し、1でZ相に関わらず即座に切削を開始します。 |
| パラメータ | Parameter #2619 thr_clamp | ねじ切り送りクランプ速度制限。ねじ切り時の送り軸の最大許容速度を定義します。 |
| パラメータ | Parameter #2620 thr_t | ねじ切りブロックに適用される加減速時定数を設定します。 |
| パラメータ | Parameter #2010 fwd_g | ねじ切り時の送りフィードフォワードゲイン値。 |
| アラーム | Operation Error (M01 0107) | G34の開始時に計算されたねじ切り送り速度が、パラメータ #2619 で設定された送り速度クランプ値を超えた場合に発生します。 |
| アラーム | Operation Error (M01 1113) | ねじ切り主軸に周速一定制御(G96)が適用されている、または他の系統からG96指令が出された場合に発生します。 |
| アラーム | Program Error (P128) | G34モーダルが有効である間に、加工条件選択コマンド(G120.1またはG121)が実行された場合に発生します。 |
| アラーム | Program Error (P35) | ねじ切り開始角度Qに360.000を超える値がプログラミングされた。 |
| バージョン差 | M80V TypeB controls | G34アクティブ時にプログラムによるパラメータ書き換え(G10 K または G10 I_J)が試みられた場合、同期中の上書きを防ぐためプログラムエラー P260 または P39 を発生させます。 |
| バージョン差 | Turning / Lathe controls | G33等リードねじ切りが逆走に対応しているのに対し、G34可変リードねじ切りは手動任意逆走(システム変数で「x *3」と定義)が厳密にブロックされます。 |
| バージョン差 | C80 Series | G26が加工割り込み(タッピング退避・工具回収)マクロに割り当てられます(レガシー機種では主軸速度変動検出にマッピングされていました)。 |
注意: G34モーダルが有効な状態で、G120.1やG121を用いて加工条件パラメータを変更しようとすると、プログラムエラー P128 が発生し、機械は即座に停止します。
ブランド比較
| 比較技術項目 | Fanuc | Siemens | Mitsubishi |
|---|---|---|---|
| ピッチ変化の符号 (K または F) | K (正 = 増加, 負 = 減少) | ネイティブSiemensモードでは F (漸増 G34, 漸減 G35)。ISOモードでは K (G34)。 | K (正 = 増加, 負 = 減少)。 |
| 多条開始角度の小数点入力 | 厳密に禁止(Qアドレスを整数で表記、例:Q180000) | ネイティブ表記の SF= にて十進数入力を許容(例:SF=180.0) | Qアドレスにて十進数入力を許容(例:Q180.000) |
| 指令寸法モードの切り替え | 座標アドレス(GコードシステムAでのX/Z vs U/W) | モーダルな G90/G91 ブロック | モーダルな G90/G91 ブロック |
| ランイン/ランアウト加速ランプ | CNC/PLCパラメータ(パラメータNo. 1626, No. 1627)内にロック | プログラムによる設定データのオーバーライド(DITS/DITEからSD 42010への書き込み) | CNCパラメータ(パラメータ #2620, #2010)内にロック |
| ブロック間トランジション | 非モーダルなGコード境界を厳格に適用(一時停止が生じる可能性あり) | コンティニュアスパスモード(G64)による滑らかなパス接続 | 非モーダルなGコード境界を厳格に適用(一時停止が生じる可能性あり) |
| 手動軸割り込み | ねじ切り中は制限またはブロック | ねじ切り中は制限またはブロック | 専用の自動ハンドル割り込み(パルスジェネレータ)を介して許可 |
技術解析
Fanuc、Siemens、Mitsubishiにおける可変リードねじ切りの根本的な違いは、記述構文、プログラミングの柔軟性、ブロック遷移時の動作挙動、およびリアルタイムでの手動制御に集中しています。Fanuc旋盤制御では、SiemensやMitsubishiの座標システムで一般的であるモーダルなG90/G91ブロックに頼るのではなく、GコードシステムAに準拠し、プログラムされた座標アドレス文字(X/ZかU/Wか)によって絶対値または増分値指令が厳格に決定されます。また、Fanucは開始角度シフトアドレスQにおける小数点入力を厳格に禁止(Q180.0ではなくQ180000を要求)しており、このフォーマットチェックに違反すると即座にシステムが停止しますが、SiemensおよびMitsubishiでは十進数表記がそのまま許容されます。さらに、Fanucには非常に厳格な自動退避チェック機能があり、ねじ切りの主要軸を退避軸に指定するとリトラクトシーケンスが実行されず、ねじ切り完了後の次ブロックの開始時にアラームPS0429を誘発して工具が急停止します。
Siemensは、設定データ(SD 42010など)およびバックグラウンドのサイクルマクロ(ISOモード時のcycle328.spfなど)を介してG34および一般的なねじ切り処理を行い、加減速およびリトラクトのプロファイルをソフトウェア上で動的に制御します。Siemensは、漸増ねじと漸減ねじを区別するために、独自のバイリンガルな二重構文モデルを採用しています。ネイティブのSiemensモードでは、漸増可変ねじ切りはG34、漸減はG35で明示的に指令され、リード変化率はアドレスF(mm/rev2単位)で、開始角度はSF=で記述されます。しかし、ISOダイアレクトモード(G291)に切り替えた場合は、漸増・漸減ともにG34に統合され、回転あたりのリード変化はアドレスK、開始角度はQで表されます。また、Siemensはねじ切りブロック間の高度なコンティニュアスパス接続(G64)をサポートしています。連続するG33ブロックとG34/G35ブロックをG64モード下で指令すると、Siemensのモーションカーネルはバッファ内の先行読み込みデータとルックアヘッド速度制御を活用してパスを滑らかに補間し、ブロック接続部での速度低下や一時停止を完全に排除して軸の急激な速度変動を抑制します。これに対し、FanucおよびMitsubishiでは非モーダルなGコード境界が適用されるため、ブロック切り替え時に軸の一時的な減速や休止が発生しやすくなります。
Siemensでは、DITSおよびDITEを用いて、プログラム内から直接ランイン・ランアウト経路の長さを制御することも可能です。これらのコマンドは設定データ SD 42010 $SD_THREAD_RAMP_DISP に直接数値を書き込むため、短いワークを加工する際に軸の加速過負荷アラーム(アラーム22280)を防ぐよう、加減速ランプ長をプログラム側から動的に調整できます。この設定は、FanucやMitsubishiでは機械メーカーによってロックされたPLCパラメータでしか変更できません。一方で、Mitsubishiは独自のリアルタイムの柔軟性を備えており、ねじ切りブロック中であっても有効に機能する「自動ハンドル割り込み」機能を搭載しています。これにより、オペレータはねじ切りパスの実行中に手動パルスジェネレータ(手動ハンドル)を介入させて軸の動きを微調整できます。このレベルのリアルタイムな手動介入は、ピッチ不良を防ぐためにFanucやSiemensではねじ切り加工中に厳しく制限または完全にブロックされています。また、Mitsubishiはパラメータで切替可能なEアドレスセレクタ(#8156 Fine thread cut E)を利用して、Eコマンドを高精度の十進数リード(小数点以下最大6桁)と1インチあたりのねじ山数表示(ridges/inch)との間で動的に変更可能です。Fanucでは精密リードの書式は事前に固定されています。さらに、MitsubishiはG34モーダル中に加工条件パラメータの切り替え(G120.1またはG121)が実行された場合、即座にプログラムエラー(P128など)を発生させて運転を中断するという厳格なチェックを適用していますが、FanucやSiemensにはこのようなモーションカーネル直結の加工条件切替サイクルは備わっていません。
プログラム例
Fanuc G34 ねじ切りプログラム例
; Fanuc G34 可変リードねじ切りプログラム例
G97 S400 M03 ; 周速一定制御を無効化し、主軸回転数を400 rpmに固定
G00 X45.0 Z5.0 ; ツールタレットをねじ切り開始点へ急速位置決め
G34 Z-70.0 F4.0 K0.5 ; Z-70.0まで可変リードねじ切り加工、開始リード4.0mm、回転あたり0.5mm増加
空運転 (dry run)の手順:
- ツールタレットがX45.0 Z5.0へ急速位置決めされ、主軸は400 RPMで回転します(G97で周速一定制御を無効化)。
- 主軸の回転とZ軸の移動が同期し、工具はZ-70.0に向かって移動を開始します。
- 主軸の最初の1回転目では、リードは4.0 mmとなります。
- それ以降の回転ごとに、K0.5の指定によりピッチが0.5 mmずつ増加します(例:4.5 mm、5.0 mm、5.5 mm)。
- 工具がZ-70.0に到達するまで同期が維持されてブロックを完了します。この動作の間、フィードホールドは無効化されます。
Siemens G34 ISOモードプログラム例
; Siemens G34 ISOダイアレクトモード例
G291 ; インタープリタをISOダイアレクトモードへ切り替え
G97 S400 M03 ; 周速一定制御を無効化し、主軸回転数を固定
G00 X45.0 Z5.0 ; 開始点へ位置決め
G34 Z-100.0 F5.0 K0.25 ; Z-100.0まで漸増可変リードねじ切り加工、開始リード5mm、回転あたり0.25mm変化
G290 ; ネイティブのSiemensモードへ復帰
空運転の手順:
- G291により、標準Gコードを解析するための外部ISOダイアレクトインタープリタが有効になります。
- 主軸回転数が400 RPM(G97)に固定され、径方向の演算ラグが排除されます。
- 工具が開始座標X45.0 Z5.0に位置決めされます。
- G34の呼び出しに伴い、主軸エンコーダがZ軸の移動を同期させます。
- Z軸がZ5.0からZ-100.0へと前進し、5.0 mmのピッチでねじ切りを開始します。
- 主軸が1回転するごとに、ピッチが0.25 mm(K0.25による)ずつ増加します。
- Z軸がZ-100.0に到達すると、G290によりインタープリタはネイティブのSiemensモードに戻ります。
Mitsubishi G34 ねじ切りプログラム例
; Mitsubishi G34 可変リードねじ切り例
G97 S500 M03 ; 周速一定制御をキャンセルし、主軸回転数を500 rpmに固定
G00 X45.0 Z5.0 T0101 ; ツールタレットをねじ切り開始点へ急速位置決め、ツール補正有効
G34 Z-70.0 F4.0 K0.5 ; Z-70.0まで可変リード漸増ねじ切り、開始リード4.0mm、回転あたりピッチ0.5mm増加
空運転の手順:
- ダイナミックな送り速度エラーを防ぐため、G97下で主軸回転数を500 RPMに設定します。
- ツール補正1を有効にした状態(T0101)で、タレットが開始座標X45.0 Z5.0へ移動します。
- G34により主軸同期が開始されます。
- 工具がZ軸に沿ってZ-70.0に向かって移動します。
- 開始リードは4.0 mm(F4.0)であり、主軸が1回転するごとに0.5 mm(K0.5)ずつ増加します。
- ハンドル割り込みが有効な場合、手動ハンドルによるリアルタイム軸介入(ハンドルインターラプト)が可能となり、ねじ切りサイクル中の微調整を行えます。
エラー解析
| ブランド | アラームコード | 発生トリガー条件 | オペレータ側の症状 | 根本原因とトラブル解決策 |
|---|---|---|---|---|
| Fanuc | Alarm PS0429 | G10.6自動退避時に、ねじ切りの主要軸を退避軸として指定した。 | CNCがアラームで停止し、工具が被削材の内部で突如停止して、ワークが破損する。 | 退避軸を変更するか、G10.6パラメータを正しく構成して軸競合を防止してください。 |
| Fanuc | Alarm PS0050 | G34ブロック内でコーナー面取り(C)またはコーナーR(R)を直接プログラムした。 | 対象ブロックの実行直前にプログラムが停止する。 | G34ブロックからCまたはR座標を除外し、面取りは別のブロックでプログラムしてください。 |
| Fanuc | Alarm PS0009 | Parameter No. 3453 Bit 4 (FRC) が1のときに、ねじ切りブロック内でEまたは,Eアドレスがプログラムされた。 | 制御装置が送り指令を拒否し、運転を停止する。 | FRCパラメータ(No. 3453 Bit 4)を0に設定するか、リード指定には標準のFアドレスを使用してください。 |
| Siemens | Alarm 14800 | 固定フィードレートが無効な状態で、G34/G35中に経路速度がゼロ(例:F0がアクティブ)と評価された。 | Z軸が動かず、プログラムの動作停止エラーが発生する。 | 可変ねじ切りブロックの内部または直前で、有効な送り速度(F値)を定義してください。 |
| Siemens | Alarm 61800 | ISOダイアレクトモード(G291)でG34が呼び出されたが、マシンデータ MD 18800 が有効になっていない。 | システムが中断し、インタープリタ言語障害を報告する。 | 外部言語解析をアクティブにするため、マシンデータ MD 18800 の設定値を1にしてください。 |
| Siemens | Alarm 61001 | 上位ねじ切りサイクル内で、リードまたはピッチ変化率パラメータに矛盾や不適切な値が設定された。 | サイクル処理が停止し、ピッチパラメータ不整合のエラーを表示する。 | サイクル内のパラメータ定義とピッチ指定が一致しているか確認し、正しい値に変更してください。 |
| Mitsubishi | Operation Error (M01 0107) | G34開始時の計算送り速度が、軸の最大切削送りクランプ速度を超えた。 | 軸移動を開始する前に機械が停止し、アラームを表示する。 | 主軸回転数(RPM)を下げる、リード変化率Kを減らす、またはパラメータ #2619 のクランプ値を上げてください。 |
| Mitsubishi | Operation Error (M01 1113) | G34ねじ切り実行中に、主軸の周速一定制御(G96)が有効になっている。 | タイムラグが発生しピッチ同期が乱れるため、CNCが運転エラーを検出して停止する。 | G34を呼び出す前に G97 指令を挿入して、主軸回転数を一定値に固定してください。 |
| Mitsubishi | Program Error (P128) | G34モーダルが有効である間に、G120.1またはG121の加工条件選択が実行された。 | 該当の不正条件ブロックに差し掛かった時点で、プログラムが即座に停止する。 | 加工条件パラメータの切り替えを行う前に、G34モーダル状態を解除(G00やG01を指令)してください。 |
| Mitsubishi | Program Error (P35) | ねじ切り開始角度Qに360.000を超える値がプログラミングされた。 | プログラムチェックでエラーになり、動作を停止する。 | 開始角度Qの設定範囲を0.001〜360.000度の範囲内に収めて記述してください。 |
実務応用ノウハウ
超硬インサート刃先のチッピングおよびワークへの深いスクラッチ傷による完全な廃棄処分(スクラップ化)は、三菱制御において可変リードねじ切り中にツールタレットを不用意にマニュアルジョグまたは逆方向へ後退(バックトラック)させようとした際に発生するダイレクトな結果です。G34コマンドは、標準の等リードねじ切りであるG33ねじ切りとは異なり、システム変数でマニュアル任意逆走(システム変数で「x *3」と定義)が厳格に禁止・ブロックされています。停電やブロック割り込みで送り軸が緊急停止した際、径方向(X軸方向)へ工具を退避させずにそのまま軸を後退させると、超硬インサートがねじ山を引きずり、一瞬で製品を破壊します。
同様に、Fanuc制御において、G10.6による急退避シーケンスの退避軸としてねじ切りの主軸(メジャー軸)を指定すると、自動退避動作が実行されず、次の非ねじ切りブロックに到達した時点でアラームPS0429「G10.6における不適切な指令」が発生し、ツールが金属素材の内部で突如停止するというトラブルに見舞われます。また、Siemens制御では、G34/G35ブロックの実行時に有効な送り速度が定義されていない場合、即座にアラーム14800「指令軌道速度がゼロ以下」がトリガーされ、Z軸スライドが停止した状態のまま主軸が回転し、ツールがワーク表面を激しく擦ることで表面性状を損ないます。したがって、生産現場の段取りにおいて、退避軸の割り当てや送り速度の設定値を事前に照合・検証することは、非計画停止および部品廃棄を防ぎ、量産工程の信頼性と寸法繰り返し精度を確保するために極めて重要です。
関連コマンド
- G32 等リードねじ切り (旋盤加工): G32はGコードシステムAにおける標準的な等リードねじ切りコマンドであり、G34可変リードねじ切りの基準となる等ピッチ動作を指令します。
- G33 等リードねじ切り (フライス加工): G33はフライス加工やシステムB/Cの旋盤で使用される等ピッチねじ切りコマンドであり、可変リードを実行する前にキャンセルされている必要があります。
- G31 スキップ機能 (計測用): G31はタッチプローブ計測やツールセッターのキャリブレーションに使用され、ねじ切り加工の開始前に必要な高精度の座標基準(ワーク座標原点)を確立します。
- G96 / G97 (周速一定制御 ON/OFF): ねじピッチ同期を破損させる主軸速度の動的変動を防ぐため、G34を実行する前に周速一定制御(G96)を無効にし、主軸一定回転(G97)を有効にする必要があります。
- G290 / G291 (Siemens用インタープリタ切替): G291により外部ISOダイアレクトインタープリタが起動し、Siemens制御上でネイティブコマンドの代わりに標準のFanucスタイルG34構文を解釈・実行できるようになります。
おわりに
可変リードねじ切り(G34)における安定運転と精度維持は、加工前の綿密なパラメータ照合、構文フォーマットのチェック、および同期タイミングの制御にかかっています。オペレータは、プログラム実行前の段取りプロセスとして、G97指令による主軸回転数の固定およびG40による刃先R補正キャンセルの実行を標準手順として徹底する必要があります。Fanucにおける小数点以下の記述を排除したQアドレスフォーマットの検証、SiemensにおけるDITS/DITEによる加速ゾーン設定の確認、そしてMitsubishiにおける急送りフィードクランプ(#2619)の適正設定を事前に行うことで、想定外の動作停止や干渉事故を防ぐことが可能です。加工開始前にZ軸方向に十分なオフセットを設けた空中での空運転(テスト運転)を実施し、リード変化とピッチ減少量が限界値を超えて負の値にならないかを最終確認することが、機械保護とロット安定性を高めるための実務的なベストプラクティスです。
よくある質問
G34で長尺のエクストルーダースクリューを量産する際、ロットが異なるとねじ山のピッチ精度にばらつきが生じるのはなぜですか?
主軸ベルトの摩耗によるスリップや、サーボモーターの温度変化に伴う主軸エンコーダと送り軸間の微小な追従ラグ(ラギングエラー)の変動が原因です。ロット切り替え時には、診断画面で同期追従エラー値を確認し、サーボフィードフォワードゲイン(Mitsubishi #2010など)を調整して同期ズレを解消してください。
デグレッシブ(減小)ねじ切りでKアドレスを負の値で設定する際、プログラム実行前のパラメータと数値検証のポイントは何ですか?
ねじ切り終了点においてピッチの計算値がゼロまたは負の値(F + K×回転数 ≦ 0)に達すると、制御装置は異常を検知して停止するか異常な送り動作を行います。加工前に必ずワーク終端部Zにおけるピッチを算出し、限界ピッチ以下にならないよう送り変化率Kの設定値を修正してください。
Fanuc制御の機械でG34可変リードねじ切り指令時、アラーム「PS0009 意図しないアドレス入力」が発生して運転が停止する原因は何ですか?
Parameter No. 3453 Bit 4 (FRC) が「1」に設定されている場合、ねじ切りブロック内でのEアドレスまたは,Eアドレスの指令が禁止され、入力時点でシステムが即座にエラーを吐くためです。段取り前に制御装置のパラメータNo. 3453のビット4を「0」に変更するか、ねじリードの指令をFアドレスに書き換えて実行してください。
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- CNC CARE Co-Founder (May 2025 - Present)
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- Reis CNC Service Engineer (2003 - 2008)
- Ören Kalıp CNC Mold Line Team Leader (1999 - 2002)
CNC工作機械業界のあらゆる分野で25年以上の経験を持ち、ブランドに依存しないコンサルティング、エンジニアリング、純正部品サービスを提供するCNC CAREの共同創業者として活動を続けています。
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